法律初心者を対象とした、無料で読める法律基礎講座
法律無料基礎講座

取得時効・時効取得(要件・効果)
 スポンサーリンク


 前のページでは時効制度の存在理由について説明したから、
   ここからは権利を取得する事ができる時効に関して説明するね。

 時効による権利取得ってことだね。

 そうだね。
   民法上用語では「取得時効」又は「時効取得」と呼ばれているよ。
   それでは、一番解かりやすい所有権の時効取得について説明していくよ。

   まず所有権を時効により取得する為には、

 1:他人のものを、所有の意思をもって

 2:平穏かつ公然に

 3:そして、その占有を一定期間占有すること

    
 が条件となるよ。

jikou_youken.png


 ここで、数点ほど注意してもらいたい事があるんだ。

   それは、「他人のもの」つまり自分の物については時効によって権利を取得する事が出来ないように
   解釈する事ができるが、「判例」つまり裁判例では「他人の物と規定しているのは、自分の所有物に対する
   時効取得は無意味だからにすぎず、絶対的に自己の所有物の時効取得が認められないわけではない。」
   と説明していることからも、自己の物についての時効取得も認められているよ。

   なぜ、裁判所がこの様な事な解釈をしたのかというと
   このような事件があったからなんだ。



   【事件内容】

jikou_taikou.png


   ①Aさんが自己所有の土地をBさんに2000年1月1日に売り渡した後、
   Aさんは土地についての登記名義が、いまだ自分名義に
   なっている事を奇貨(※1)とし、2000年3月1日にCさん
   当該土地の権利を売り渡し、その所有権移転登記を済ませてしまった。
   ※1:利用すれば思わぬ利益を得られそうな事柄・機会。
  
   ②そして、その十年後に突然、CさんBさんに対し、
   「登記の名義は私(Cさん)にあるのだから当該土地を私(Cさん)に
   引渡しなさい。」と主張した。
  
   ③その主張に対し、Bさんは「この土地を善意かつ無過失で
   10年間占有していたのだから、時効取得により取得しているはずだ、
   従って、あなたの請求は不当であり応じる事は出来ません。」
   と反論しました。
   
   ④そこで、Cさん
   「何を、おっしゃっているのですか。民法の時効取得規定では
   所有権を時効で取得する事が出来る要件として、その対象を
   《他人の物》と規定しているではありませんか。
   そして、あなたはAさんとの売買契約によって
   所有権を取得しているのだから、当該土地の占有は
   自己の所有物に対する占有であり、取得時効の要件を
   満たしていない以上、時効による所有権取得は
   考えられませんよ。」と主張しました。
   
   ⑤納得がいかないBさんは裁判所に上記の主張をしました。



 こんな事があったんだ。
   結局は先程説明したとおり
   自己の物についての時効取得が認められBさんが保護されたんだ。

   
   では、所有権の取得時効の要件について詳しく見ていこう。
   
 まず、所有権の取得時効の要件に「所有の意思をもって占有し・・・」とあったでしょ、
   これは要するに所有する意思もなく占有をしていても、
   時効により所有権を取得することはできないという意味なんだ。
    
   つまり、所有意思がない賃貸物などについては、
   ずーと、住んでいても当該賃借物の所有権を取得する事はできないんだよ。

   
 次に、「一定期間継続して占有する・・・」要件についてなんだけど、
   実際、対象物を一定期間占有継続したことを、裁判において立証する事はすごく困難なんだ。
   ※2:立証とは、証拠をあげて事実を証明すること。
   
   その為、民法の規定で「占有開始時と時効完成時の占有が証明できれば、
   その占有は継続していたものと推定する。」と規定しているんだ。
    
   つまり、占有者は占有が継続していた事を証明しなくても良いという事なんだ。 

 最後に「平穏、公然に・・」の部分についてみていこう。
   この「公然」とは、隠秘(いんぴ)な占有では時効取得することが出来ないという事だよ。

 「インピな占有」?

 隠秘な占有っていうのは、簡単に言うとコソコソと他人の物を占有することだね。
    
   それから、平穏というのは、その占有に際して強暴であってはいけないということだよ。
   つまり、暴力などに任せて占有していても時効取得することが出来ないと言う事だね♪

 そうなんだ。フムフム。
   
   あっ!! 豚君、占有時に自分の物で無い事を知りつつ、
   占有していても時効により所有権を取得する事ができるんだね
   つまり、おなじみの「悪意」とか「善意」とかだね。

 ひよこ君の言うとおり、「自分の物で無い事を知りつつ占有していた場合」でも
   時効の効果でその所有権を取得する事ができるよ。
   但し、占有の開始時に「悪意又は有過失」であるか「善意かつ無過失」であるかによって
   時効取得するのに必要な占有期間が変わってくるんだよ。

 どの位、変わってくるの?

 まず、「善意かつ無過失」で占有を開始した場合、時効取得するのに必要な占有期間は10年になるよ。
   それに対し、「悪意又は善意でも過失がある場合」には必要な占有期間は長くなって20年となるよ。

 それでは、最低20年頑張れば、時効で土地を取得する事ができるかも知れないんだね。

 賃貸借や使用貸借といった利用権が成立しておらず、
   所有の意思をもって、平穏且つ公然に20年継続して占有していれば可能性はあるね。

 次のページ→取得時効(一部)

 スポンサーリンク
 CopyRight(C)2005~ 法律無料基礎講座   著作権・免責事項

inserted by FC2 system