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詐欺(さぎ)による意思表示
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 前のページでは、表示者が単独で勘違いをしたり、
   嘘をついたりしたりした場合の意思表示の態様を紹介してきたけど、
   このページでは他人の行為により表示者の意思表示に錯誤が生じる場合を紹介していくよ。

 ではまず、「詐欺行為」により意思表示をした場合の効果などを見ていこう。
    
   詐欺行為と聞くと、人を騙(だま)す行為すべてが
   詐欺行為に思えるけど、そうではないよ。
    
   なぜかというと「詐欺行為」と評価される為には、
   そのだます行為が社会的に許容される範囲を
   超えるものでなくてはならないんだ。
   
 例えば、お祭りの屋台で「この、ひよこはニワトリにならないよ。」と言われ、
   そのひよこを買ったとしても、その露天商の行為は詐欺とは評価されないんだよ。
 
   なぜなら、このたぐいの嘘は軽微な嘘のため、一般的に違法性がないといえるからなんだ。
   
   つまり「詐欺行為」と評価される為には法律的にも
   違法であると言えるものでなくてはならないんだ。

 へぇ、そうなんだ。
   僕もお祭りで、「この金魚30年は生きるよ」と言われてすくったけど、
   3ヶ月位しか生きなかったな・・。

 生きたほうじゃない・・。
   それでは、詐欺行為によってした意思表示に欠陥、いわゆる「意思」と「表示」との間に
   矛盾が生じていることを表示者は自分で気付いていると思う?

 どうだろ?
   
   例えば、Aさんが所有している土地を安く手に入れるために厳格な地盤調査をしていないのにも関わらず、
   BさんAさんに「私が最近、厳格な調査をした結果、ここら辺の土地は地震に弱い地盤である事が
   解かったんだ、この事が近いうちに皆に知れたら、今の時価の20%位に下落すると思うよ。
   だけど、私に今売ってくれたら時価の70%で買い取るよ。」と言われ、Aさんが売却した事を
   想定して考えてみると、Aさんの内心的な効果意思と表示との間には不一致が生じていないと思うな。
 
意思と表示

   なぜかと言うと、
   Aさんの内心的な意思は「今の時価の70%で売ろう」という内心的な意思で、
   その表示行為が「時価の70%での売却行為」であるから、不一致は生じていないと思うんだ。

 そうだね。
   この場合には、Bさんの詐術行為(※1)によって、Aさんの意思表示に、
   「錯誤」、いわゆる動機の錯誤(※2)が生じてしまっているね。
   
   ※1:人をだます手段
   ※2:時価が下がらなかったら、売却をしなかったと考えられるため。
   
 つまり「詐欺行為による意思表示」とは、
   他人の詐欺行為によって表示者が錯誤に陥り、
   その錯誤に基づいて意思表示をする事と言えるね。

 この違法性のある詐欺に基づいて意思表示をしてしまった場合、
   その法律的な効果はどうなるの?
   また、どうすればいいの?

 詐欺による意思表示に関して民法では、
   「詐欺による意思表示は取り消す事ができる。(民法96条-1項)」と、規定しているよ。
   
   この規定で注意してもらいたい点は、
   「取り消す事ができる」、つまり取り消すまでは当該法律行為は有効であるから、
   詐欺者の請求は「取り消されるまで」民法上有効なんだ。
   
   だから詐欺者が逮捕されて、刑法上の規定に基づき刑罰を受けたとしても、
   なんら民法上の請求に影響はないんだ。
 
 へー。
   詐欺をした人が逮捕されれば、
   その法律行為は当然に無効か取り消しになると思ってた。

 もう1つ、この取り消す事ができる権利には、
   取り消しする事ができる期間があるから注意してね。
 
 詐欺をした人が悪いんだから、いつでも取り消す事ができる訳じゃないんだ・・。
   
   その取消期間はどの位なの?。 
 
 そうだね。
   詐欺をした人は確かに悪いんだけど、外見から見たら
   その取引も通常の取引となんら変わらないよね。
   
   もし、取引からだいぶ年月が経過したのにもかかわらず、
   ある日突然、表示者が「当該取引は詐欺による意思表示に基づくものだったので取り消します。」と
   主張してきたらひよこ君はどう思う?

 そうだなぁ。
   経過した年月にもよるけど、詐欺だと疑問に思ったら直ぐにでも、その事を主張すべきだと思うかな。

 そうだね。
   法律も「権利の上に眠るものは保護に値しない」という精神からか、
   詐欺による意思表示に基づくものでも、その取消権に消滅時効という制約を設けているんだ。
   
   その取消権の時効期間はこうだよ♪

   ①「追認をする事ができるときから、
     5年内にこれを行使しなければなない。」という規定と、

   ②「行為のときから20年間のうちに
     取消権を行使しなければならない」という規定の
     2規定が存在するんだ。

   まず、
   ①の規定内の「追認することができる時から」とは
   「詐欺があったことを知った時から」という意味なんだ。
   そして、
   ②の規定内の「行為のときから」とは、
   これは追認する事ができる状態が発生なくても、
   「当該法律行為のときから」時効が進行するという意味なんだ。
   
   つまり、「詐欺による意思表示をした時から」という事になるね。
 
 そうかぁ・・・
   行為のときから20年もたてば、
   詐欺だったのかどうか判断できなくなるもんね。

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